読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

♨️黒川温泉に学ぼう 第2回(黒川温泉シリーズ第3回目)

    前回の「黒川温泉に学ぼう」の投稿は、黒川温泉への提言を途中で終えてしまいました。それではさっそく前回の「黒川温泉への提言」の続きから始めます。

f:id:takeo1954:20160905145017j:image

3.露天風呂と露天風呂めぐりを更にインターナ ショナルに対応させ、進化させる
    温泉地にとっては当然〝温泉の質〟が最も大切な要素となります。温泉の持っている効能の他に、温泉が癒される空間になっていること、脱衣所などの施設が快適で使いやすいことなどが上げられます。特に癒される空間という点で、外の景色を眺めながら入浴できる露天風呂の有無は人気を大きく左右する要素となっています。今後この露天風呂を外国の観光客の皆さんにも楽しんでもらえるような発想を持ってこれから対応をすすめていくべきです。

   それからこれはまた章を改めて触れたいと思いますが、日本はまだ外国からの観光客が少なすぎます。例えば隣の韓国と比較してみましょう。日本は国土面積で韓国の3.79倍あります。同様に人口で日本が2.5倍(2015年実績)経済力比較でGDPで韓国と比較すると、こちらも2015年度実績で日本のGDPは4123年億(US)ドル、韓国は1377億ドルで、日本が2.99倍の規模になります。ところが外国人観光客の受入れ数となるとおかしなことになります。毎年世界観光機関が発表している「国別海外旅行者受入数」で比較すると2014年度実績て日本は1341万人、対して韓国は1420万人で日本は韓国に負けているのです。2015年度で日本は1973万人と大幅に増やして韓国を逆転していますが、〝外国人旅行者受入数〟では日本は韓国と拮抗しています。この他のアジアの国で日本より上回っている国はトルコ、タイ、香港、マレーシアなどがあります。例えばタイは2015年度実績で2988万人です。トルコはまだ2015年度実績が集計されていません。また最近のテロ事件の続発で今現在は大幅なマイナスと想定されますが、2014年度実績で見ると3998万人です。日本の経済規模からみて海外旅行者の受入れ数が2000万人を超えそうだなどと喜んでいる場合ではないのです。遅まきながら今のレベルを倍増させていく戦略が必要です。やっと国もそんな動きになりつつあります。安倍首相を議長に前の投稿で紹介したデービッド・アトキンソンさんもそのその委員に加わり、「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」で今後の日本の観光ビジョンをまとめている。それによると外国人旅行者受入数を2020年に4000万人、2030年に6000万人とかなり意欲的です。この外国人旅行者受入数目標に関して、アトキンソンさんは本の中で「これまでの目標は〝2020年に2000万人〟など黙っていても達成できるレベルでした。日本の国の潜在力からみて2030年で8200万人の外国旅行者を目標としてよい」とその根拠を示して言っています。いずれにしても外国人旅行者受入に関して国の動きが変わりつつあります。やっと戦略的な動きになっています。しかし、これは大きな変化です。

🔶首相官邸  政策会議

f:id:takeo1954:20160903085341j:image

f:id:takeo1954:20160903085353j:image

   それからもう一つの大きな動き、トレンドがあります。それは海外旅行者の総数、パイがどんどん増えていることです。例えば東南アジアのタイなどは、一昔前は貧しい国の代表のような感じで外国人旅行者の受入れ(インバウンド)には熱心でしたが、自国民のアウトバウンドに関してはとてもそんな余裕はありませんでした。そのタイが2015年度79万人が日本を訪れており、アメリカに次いで6番目に多くなっています。また、少しデータが古いですが、2012年のタイのアウトバウンド数は570万人です。タイの全人口6884万人の約8%です。近い内に日本のアウトバウンド数の人口比率と変わらなくなる勢いです。世界には確かにまだ貧しい国、政情不安な国はたくさんあります。しかし、一方で東南アジアなど多くの国で経済力が高まり、国民の所得も高くなっています。その結果海外旅行をする人の総数が増えています。従って日本だけでなく、世界のほとんどの国でインバウンド客が増える傾向にあります。これが今の世の中のトレンドです。時流です。この時流にあらゆる観光地、もちろん黒川温泉も対応していく必要があります。そう、黒川温泉の魅力の一つである〝露天風呂〟を更に進化させる時がきています。

   さて、これから黒川温泉の露天風呂を外国の人にも安心して利用してもらうための施策です。もちろんこれは温泉についての研究者でなく、業界の関係者でもない、日本の伝統を大切にし、日本の醜い景観を変え、世界の人にもっと日本に来てもらい、世界の人々に日本のことをもっと理解してもらいたいと願う一日本人の意見、仮説です。それでは大胆に提案します。

   これまでの黒川温泉の露天風呂と欧米の温泉プールを組み合わせ、外国人も入りやすい露天風呂施設を新たに造る。

   海外にももちろん温泉があります。野外の露天式のものもたくさんあります。しかし、日本と大きく違うのは露天風呂ではなく、温泉プールです。プールサイドではデッキチェアで日光浴など横になってくつろいだり、温泉プールに入ったリでかなり長い時間を過ごします。海外のいくつかの温泉地を写真で紹介しましょう。

🔶ヒエラポリス遺跡・ローマ浴場/トルコ

f:id:takeo1954:20160903052200j:image

                      〈写真↑ wondertrip〉

🔶パート・ラガッツ/スイス

f:id:takeo1954:20160903052222j:image

                        〈写真↑  wondertrip〉

🔶サトウルニア温泉/イタリア

f:id:takeo1954:20160903052320j:image

                          〈写真↑  wondertrip〉

🔶バーデン・バーデン/ドイツ

f:id:takeo1954:20160903092106j:image

                               〈写真↑  JTB〉

🔶リュブリャナスロベニア

f:id:takeo1954:20160903095525j:image

                               〈写真↑   JTB〉           

    まず、規模が違います。黒川温泉でこの規模の温泉施設を建設するのは無理です。黒川温泉は24の旅館が集まっていますが、宿泊可能な人数はそれほど多くはありません。従って新たな露天風呂は、黒川温泉の旅館が持つ既存の露天風呂よりは大きいが黒川温泉の宿泊収容可能人数に対応した規模にします。イメージとしては奥黒川温泉の〝山みず木〟の男性用露天風呂の3〜4倍の大きさです。それから露天風呂と併設で日本家屋風の建物の室内温泉プールも造ります。20メートル程度の長さの温水プールとプールサイドは、室内からデッキチェアで露天風呂側を見渡せる十分なスペースのプールサイドも確保します。そうすれば冬場の寒い時期も中から外の景観を楽しめるようになります。方形のプールはどうしても日本的な景観に合わないので日本家屋風の建物で外から見えなくします。それから露天風呂と室内温泉プールの周りは、後藤哲也さんが〝山みず木〟の建設で手腕を発揮した雑木林造りのノウハウをフルに活かします。黒川温泉の周辺の景観は、スイスや写真で紹介したスロベニアの温泉地だけでなく、日本の有名な温泉地と比べても正直なところ劣ります。周りの景観を〝絶景〟に造り変える必要があります。雑木の組み合わで四季折々楽しめる景観にするのでする。「そんなことができるのかって?」。「できます。後藤哲也さんの露天風呂造り、雑木林造りのノウハウを今の黒川温泉の組合の皆さんが受け継いでいるのならできます。」。

   それから、これから外国人の受入れを本格化していくために「水着着用」を原則とします。水着着用なら男女別々に露天風呂を造る必要がなく、一つの施設で済みます。でも、露天風呂で「水着着用を原則」などと提案したら、こんな声が聞こえてきそうです。「バカを言うな!日本の露天風呂で水着着用などあるか、素裸で入るのが当たり前だろう。」と。確かに日本の露天風呂で水着着用というのはありません。私もすべての日本の露天風呂は、〝水着着用〟に変えるべき、なんて言いません。黒川温泉での提案は、一つの実験の位置づけもあります。これから外国人の旅行者は、黙ってていても増えていきます。一方日本の人口は減少に転じると同時に高齢化がすすみ、仕事に従事する生産年齢人口は減り続けている(1995年より減少に転じています。)。人口が減少すれば日本の労働生産性を上げ続けないと経済規模は減少する一方です。ヨーロッパなどでは政策的に条件付で移民政策をとって人口の微増を維持してきました。日本も海外に渡った日系人の子孫などに限った受入れを行ってきましたが、その比率は海外と比べるとわずかです。日本の移民受入れ政策がまだ定まっていないように、移民を増やして人口を増やす方法は、クリアすべきハードルが高い。そこで日本は戦略として外国人旅行者を増やしていくべきです。アトキンソンさんも「短期移民者である」として「政策的に外国人旅行者を増やすべき」と言っています。そう、人口が増えるのと同じ経済効果をもたらすのです。水着着用もこれからのトレンド対応の一環です。しかも黒川温泉で一つだけで行う。それぞれの旅館では今まで通りの温泉、露天風呂を維持していけばいいのです。

   話しが少し余談となります。江戸時代の幕末にアメリカの初代駐日公使として日本に来て将軍にも謁見し、幕府と交渉して日米通商友好条約を結んだ立役者のハリスという人の名前は学校の歴史の時間に教わったと思います。そのハリスが下田に降り立って滞在した時の印象を書いています。ハリスは日本の町の清潔なことなど一つの例外を除いて日本を大変評価してくれています。しかし、その一つの例外とは公衆浴場(銭湯)が混浴だったことです。謹厳なハリスは「なんという人達だ。とうてい許しがたく信じられない。」と言っています。それから150年以上経つ今、日本人である私はむしろハリスの気持ちが良く分かります

f:id:takeo1954:20160905162133j:image

   というように「伝統」「習慣」といっても時とともに取捨選択し、進化し、少しずつ変化していきます。

   余談ついでにもう一つ。外国の人が日本に来て驚くことがいくつかありますが、これはその一つです。男性の外国人が公衆トイレを利用するため男性用トイレに入ると清掃をしているスタッフに出会うことが当然あります。そしてそのスタッフが女性である(たいていは女性の高齢の人)ことに驚くといいます。そう、ほとんどの外国ではそんなことはありえないのです。私も日本人ですがそのことに違和感を感じている一人です。比較的最近の出来事でこんなことがありました。私の実家は山梨県にあります。昨年私の実母が亡くなり、先月8月に1周忌の法要がありました。早朝に伊勢を立ち、マイカーで高速道路を使って山梨に向かいます。総距離は350kmほどあるので途中サービスエリアのトイレを使います。2時間半ほど高速を走って新東名に入って最初の方のサービスエリアで車を止め、トイレを利用しました。そのサービスエリアの男性用トイレの中に入ると、いきなり女性作業員の人から「おはようございます!」と大きな声であいさつされました。思わぬ場所で、それも高齢とはいえ女性からあいさつされ、違和感を感じあいさつを返すことができませんでした。もちろん今でも違和感を感じています。しかし、多くの日本人はそのことにさほど違和感を感じていないのでしょう。だから今も続いているわけです。

   同じように露天風呂の混浴があっても違和感を感じない。その露天風呂で水着着用などとんでもない。素裸で入るのが当然でそれが日本の習慣であり伝統だ、という人も多くいるのでしょう。しかし、私はその習慣、伝統は変えるべきと思っています。もちろん私は日本人で日本のことが好きです。この黒川温泉のシリーズでの投稿の最初の方で日本の観光地が世界の観光地に伍していくためには〝日本らしさ、日本的な雰囲気を打ち出すことを徹底することです〟と書きました。また、日本の街並みの景観がこれまでの伝統的なたたずまい、景観からどんどん断絶に向かっているようで危機感を感じている一人です。ただ日本の習慣、伝統のすべてを残さなければならないとは思っていません。海外から入ってくるものも取捨選択して上手く取り込んでいけばいいのです。この30年の間に日本のトイレは和式から洋式に変わりつつあります。私も洋式派に変わりました。洋式トイレの方が使いやすいしメンテナンスしやすいからです。

   さて、余談をこのくらいにしておきましょう。話しを元に戻します。私の提案した外国人も気軽に利用できる露天風呂&温泉プールの新たな建設ですが、海外の温泉プールのように大きくなくていいと書きましたが、それでも大きな投資となります。後藤哲也さんが黒川温泉から約2Km離れた奥黒川温泉に約3000坪の土地に山みず木を完成させたのが1989年。露天風呂、旅館の建物など総工費約5億円だと本で紹介されています。しかし、これは地元の農家の人から頼まれて購入した山の中の田んぼだったところで土地の値段は今と違ってそんなに高くはなかったでしょう。それと建物から露天風呂の設計、建造まですべて後藤哲也さんの頭の中に青写真があり、自らも現場で指揮し自ら作業に入って完成させています。通常なら10億と言われても納得できる施設です。それを一つの露天風呂としては、山みず木の男性用露天風呂の3〜4倍の大きさです。そして温泉プールとその広いプールサイドをしっかり収め、軽食の取れるレストランもある和風建造物、そして敷地と周辺への雑木の植樹。10億円は下らないでしょう。それからこの後で触れますが、関連して散策道の拡充なども合わせて取り組むべきでそのコストもかかります。莫大な資金が必要ですが、できれば後藤哲也さんの意志を受け継いだ人が中心になって法人組織として地元の人、行政にも出資してもらい、法人として運営してほしい。それが無理なら外部資本の力を借りることも視野に入れます。こちらから青写真と遵守すべき条件をしっかり提示して、その条件の中で開発プランを提示してもらい、トップと面接し、プランとトップの姿勢、人物像を総合的に評価して決める。

   それからこれだけの投資になるわけですから専門家の意見を踏まえることと十分なリサーチは必要です。それで今回の提案は外国の人にもっと利用してもらうための施策ですからぜひ外国人の意見を聞くべきです。そのものずばり「新・観光立国論」を執筆したデービッド・アトキンソンさんに意見を求めてみてはいかがでしょう。アトキンソンさんはイギリス人でオックスフォード大で日本学を専攻。ゴールドマンサックスアナリストを経て2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手掛ける小西美術工藝社に入社。2011年より会長兼社長に就任している。安倍内閣の「観光ビジョン構想会議」のメンバーになるなど多忙を極める。会うのも大変かもしれませんが、だからこそ意見を聞く価値があります。

   それと海外に行って黒川温泉の新たなプランを持って海外の人がどういう反応、関心を示すかリサーチします。温泉の利用の仕方としてヨーロッパとその他の国で大きく異なります。ヨーロッパの温泉の利用は「療養・保養」目的での利用が極めて多い。日本も昔から湯治目的の利用があって今もそうした利用があるがヨーロッパの場合、日本の比ではない。とりわけドイツでは健康保険制度とも連動し、温泉医の診断のもとに温泉治療館での各種入浴治療制度の他、さまざまな保養施設、スポーツ施設、文化施設などが利用できるなど、制度の充実ぶりには圧倒されるものがあります。今回提案した内容を持ってしてもドイツのバーテン・バーデンなど(私も写真と本の内容でしか知らないが)を見せられたら恥かしさを感じてしまうでしょう。バーデン・バーデンの中心地は、中世の町並みを今に伝え、散策、ショッピング、レストランでの食事を楽しむ。クアハウス(温泉を利用した療養・保養施設)には会議場、カジノやレストランも併設されている。1998年に新設されたヨーロッパ第2の大きさを誇るオペラハウス「フェストシュピールハウス」では、オペラ、音楽会が絶えず催されている。文化に対する裾野の広さと深さにただただ圧倒されるばかりです。バーデン・バーデンの街やさまざまな施設を写真で見て、そしてその制度の仕組みや実際の運用を知れば知るほど私たち日本人に文化に対する理解、考え方、姿勢というものを根本から教えられている気がしてなりません。私は黒川温泉が〝世界の観光地に伍していける観光地をめざせ〟といいました。しかし、バーデン・バーデンのような温泉地に簡単に追いつけるわけではありません。じっくりと学び、長い時間をかけてよいところを取り込んでいく姿勢が必要です。そう、温泉地、観光地は単にレジャー、余暇を楽しむ施設や場所だけではありません。その国のその土地の文化を感じて感動し、そしてそれが心を癒し、リフレッシュさせる力を持つ。そうしたものが観光地、温泉地にしっかり根づいている。そんな状態をめざさなければなりません。

 f:id:takeo1954:20160905183900j:image

f:id:takeo1954:20160906091806j:image

f:id:takeo1954:20160905183922j:image

   しかし、私はヨーロッパの人に期待する部分があります。私の推測ですが、世界から日本に来る旅行者の中で〝日本の文化を知りたい〟という思いが一番強いのがヨーロッパの国々のような気がしています。私は伊勢神宮内宮前の土産物販売、一般個人客及び団体向けの食事などを行う店舗で仕事をしています。当然団体の外国人のみなさんも当店を利用してくれます。日本の他の地域に来る外国人と伊勢では少し傾向が違います。アジアの国の中では、台湾の人の利用が中国人と並んで多く、ツアーの団体など当店の食事もよく利用してくれます。中国人はここ数年で最も増えていて伊勢に来る外国人の中では最も多い感じです。少し前のような爆買いはなくなりましたが、それでも土産物はよく買ってくれます。ただ失礼ですが、伊勢神宮に関心があるというよりゴールデンルートに派生した観光地の一つとして来ている感じを受けます。韓国人は日本に来る人に比べ伊勢まで来る人は少なく、最近少しずつ増えています。また数年前までほとんど伊勢で見なかったタイやマレーシアなど東南アジアの人が来るようになりました。欧米ではアメリカ人が来日する旅行者の中では、約80万人(2013年観光白書)と最も多いのですが、どういうわけか伊勢ではほとんど見かけません。一方ヨーロッパはロシアを含めて全体で来日旅行者は約90万人(同観光白書)ですが、フランス人、ドイツ人など旅行会社が当店を選んでくれていることもありますが、食事などよく利用してくれます。ただ中国、台湾などアジアの人に比べるとお土産はほとんど買いません。そんな傾向がありますが、私にはヨーロッパの人が最も〝日本という異文化を知りたい〟という気持ちが強いように思えます。ですからヨーロッパに行ってリサーチを重ねて営業することは意味があると思います。ヨーロッパの人はアジアの人に比べお土産を買う金額は少なくても滞在日数は長くなるのでトータルで使う金額は多くなります。それからまだまだヨーロッパからの旅行者が少ないという点でも受け入れ体制を見直したり、営業を強めていくことで大幅に増やせる可能性があります。アトキンソンさんが本で指摘しているようにタイはヨーロッパからの旅行者が日本の5倍近い419万人ほどが訪れています。その内訳は2014年観光庁データで、ロシアからが160万人(ロシアから日本への旅行者6.4万人)、イギリス90.9万人(イギリスから日本 22.9万人)、ドイツ71.8万人(同 日本 14.0万人)、フランス63.2万人(同 日本 8.0万人)とロシアだけでなく他のヨーロッパの国々にも圧倒的にタイの方が人気があります。アメリカだけは日本への旅行者が89.2万人でタイの76.5万人を上回っています。こうしてみると国別にバラツキがあり、営業は国別のリサーチに基づいた対応が必要なことが分かります。ヨーロッパは受け入れの体制の強化と国別の営業活動強化で来日旅行者を大幅に増やすことが可能と判断します。

   3番目の施策の内、もう一つが〝露天風呂めぐりの進化・充実〟でした。これは同じ後藤哲也さんの旅館「新明館」と1989年に後藤さんが完成させた「山みず木」で好対照でした。山みず木の露天風呂は宿泊客と露天風呂めぐり客の共用でしたが、脱衣所も広くて使いやすく、ロッカーも木製のしっかりしたものでした。受付では各種ドリンクの他、土産物も販売しています。既に外国人にも十分対応している設備、機能を持っていると思いました。これだけの設備は初めて見ました。一方新明館の湯めぐり用の露天風呂と穴(洞窟)風呂は、混浴(99%男性が利用)で脱衣所は特別なスペースはなく、風呂場の手前に脱衣カゴがあるだけです。川を挟んで新明館の反対側からは、新明館の外にある露天風呂に裸で入るのが見えてしまいます。とてもこれでは外国人が利用するわけにはいかないでしょう。また、そもそも露天風呂めぐりは、宿泊客が利用する内湯と違って露天風呂につかるだけというわけでシャワーなど頭や体を洗えるようになっていません。「宿泊している旅館の風呂で洗ってください。」ということのようです。せっかく浸かった温泉の湯をシャワーで洗い流すのはもったいないということかもしれませんが、外国人の利用を考えればやはりあった方がいいと思います。それから湯めぐりのお客にはバスタオルなど貸し出しはないのが不便でした。かといってバスタオルを持って旅館から旅館をブラブラ歩くのは大変ですし、1回使ったバスタオルを2回も使う気になりません。私の場合は1日1回の湯めぐりだったので同じタオルを2回使うことはありませでしたが、バスタオルでなく普通のタオルのみだったので、7月の暑い時期で風呂から上がって濡れた体を拭くのですが、十分濡れた体を拭くことができず少し濡れたままの体に浴衣を着るような感じでした。今後外国人にも露天風呂めぐりを利用してもらうなら(ぜひそうすべき)、空調設備付の脱衣所の設備の増設と各旅館で有料でもバスタオルの貸し出しはすべきだと思います。

   それでは4番目の施策です。

    露天風呂めぐり、温泉街散策の延長でもの作り体験など黒川温泉の特徴を活かし、一日通して黒川温泉とその周辺を楽しめる観光地に進化せる。

     先ほど紹介したドイツのバーデン・バーデンは、今後日本の観光地がめざすべき方向を教えてくれています。あのレベルに到達するには長い長い年月が必要でしょう。しかし、真摯に違いを受け止め、学ぶべきところを学ぶのです。もちろん黒川温泉もです。建物をそっくりそのまま真似るのではありません。考え方、思想を学ぶのです。建物、町並みの重厚感だけでなく、保養地として、観光地・レクレーションの場としてもしっかりと伝統と文化を受け継いで今に至っている。その奥深さに無形の重厚感すら感じてしまいます。

   話しを黒川温泉に戻します。世界の観光地に伍する観光地・温泉地を実現していくために、これから日本国内の利用者だけでなく、当然海外の旅行者にも利用しもらうことになります。特に欧米からの利用者が温泉地を利用するなら本来1泊だけの利用ではなく数日間の連泊利用を希望すると思います。しかし、現実にその希望に対応する温泉地がないので温泉地そのものを利用しないのだと思います。1983年の数字で少し古くなりますが、山村順次さんの本「世界の温泉地」にバーデン・バーデンのホテルで1人当たり平均宿泊日数は2.8日とあります。私もその数字から黒川温泉でも3日の連泊にも対応できるハードとソフトを供えようという提言になります。そうするとまず食事の問題です。朝食は3日間旅館の食事でも良いでしょう。しかし、夜の食事を3日とも同じ旅館の食事ではせっかく高いお金を出して日本まで来たのにつまらなく感じるでしょう。それで2日目から外で食事をとろうと外に出てみると、スナック的な店が2軒あるだけです。他の土産店などみんな夕方6時には閉まって真っ暗です。というわけで黒川温泉では、3連泊しても同じ旅館で食事をするしかありません。まあ、3日間違う旅館に泊まって違う旅館の食事を取ることも出来ますがそれは大変面倒です。私の場合は黒川温泉で同じ旅館に2連泊して同じ旅館で夕食を取りました。多少メニューに変化がありましたが、やはり初日のメニューと基本的には似ています。部屋も2日とも同じ個室で変化の乏しさを感じました。日本国内においては黒川温泉は、トップレベルの温泉地なのは確かですが、それでも今度もう一度黒川温泉で2連泊することになったら面倒でも旅館を変えます。

   それから黒川温泉で3連泊するとして、日中、そして夜の時間をどう充実させた時間にするかという課題です。そう、施策の4番目がこの課題です。一つが黒川温泉ので散策です。しかし、黒川温泉は24軒が集まるこじんまりした温泉地の街です。ゆっくり歩いても1時間もあれば周辺を歩いてしまいます。そこでこの散策道をもう少し延長させ、ところどころにベンチを置くなど配慮します。とりわけ長い坂道はそんな一工夫が必要です。それから先ほど3番目の施策で新たな露天風呂兼温泉プールを造ることを提案しましたが、当然黒川温泉中心地からそこまでは新たな散策道の整備が必要となります。

   そして日中のもう一つの使い方が入湯手形を使っての露天風呂めぐりです。好きな人なら3つの露天風呂めぐり(黒川温泉では3回利用できる入湯手形を1300円で販売している)をする人もいるでしょう。それでも半日あれば十分でしょう。そこで先ほどの新たな露天風呂兼温泉プールは、プールにデッキチェアを置き、レストランも中に併設しているのではぼ日中をそこで過ごせる設計とすのです。それから日中の食事の問題です。全員が新たな露天風呂兼温泉プールに造ったレストランで食事というわけにもいきません。既に黒川温泉に豆腐専門の食事の店や蕎麦屋さんがありますが、これを更に種類を増やし、充実させたいですね。

   さて、黒川温泉初日は午前中露天風呂めぐり地元の食事処で食事、午後は散策と土産店で買い物と喫茶の店で時間を過ごしました。3連泊するということは、日中の時間がまるまるもう1回あります。この時間をどう過ごすかです。風呂の好きな人ならもう一度前日と同じ露天風呂めぐり、散策、買い物でもいいかもしれません。しかし、普通は当然変化を求めます。そこで一つの提案は阿蘇山麓が一望できるミルクロードまで車で30分位で行けるので、昼食は弁当を持ってハイキングという時間の使い方です。旅館では、マップや弁当などきめ細かい対応が必要です。しかし、これは天気次第です。それから次の提案は地元ならではの物づくり体験などです。これは今どこの観光地でも工夫して取り組んでいます。もう一度外国人旅行者の立場で考えてみましょう。例えばヨーロッパの人なら何千ユーロもかけて遠い日本まで来ているのです。当然異文化に触れ、感動を味わいたいのです。一生の思い出に、私の中の物語にしたいのです。それがお客様の切なる希望です。さあ、黒川温泉のみなさん、そのお客様の切なる希望に応えるために精一杯企画をプロデュースして下さい。それから3連泊するということは、3回夜を過ごすということです。現状黒川温泉は夕方6時になると街は暗くなり、夜は散策も出来ません。では、旅館で何か用意されているか。私の泊まった旅館では、個室で食事をしたら後は部屋に戻って時間を過ごすしかありません。2日目は黒川温泉で夜2軒だけやっているスナックの一つに行きましたが……。旅館にとって最大のパフォーマンス発揮の場である夕食以外に力を割くことはなかなか難しいと思います。これがドイツのバーデン・バーデンならオペラハウスでほぼ毎日やっている音楽会かオペラを少しオシャレをして鑑賞し、帰りは街のレストランで食事をする、ということができるでしょう。いきなりバーデン・バーデンと同じレベルのことをやるなんてできないでしょう。しかし、黒川温泉のみなさん、与えられた条件の中で精一杯知恵を出し、わがままなお客様の希望に応えるために日々精進して下さい。

 

   それではここで「黒川温泉に学ぼう  第2回」を終わります。次回は、第3回として日本の観光地の課題全般について書いていきたいと思います。