🔶《第10回》私の『137億年の物語』

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    いよいよこの章が第1部「母なる自然」の最終章になります。第2部「ホモ・サピエンス」が、先史でおよそ700万年前から紀元前5000千年前までの時代を扱っているので、この章はそれまでの霊長類を含む哺乳類の繁栄を紹介しています。今分かっている最古の哺乳類といわれるものが、「アデロバシレウス」で、今から2億2500万年前に登場します。下にあるのがその想像図です。ほとんど今のネズミです。この動物の登場した時代は、恐竜が全盛に向かう時代になります。その時代から6550万年前の恐竜絶滅まで、アデロバシレウス以降の哺乳類は、1億5000万年以上の長い間、恐竜から隠れるようにして生き延びてきました。例えば恐竜の活動しない夜に餌を求めて活動したり、木の上の活動を基本にする、などです。f:id:takeo1954:20170313070655j:image【⬆︎アデロバシレウス想像図】〈出典〉ウィキペディア フリー百科事典「アデロバシレウス」 更新日時  2016.12.18

 https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:Adelobasileus_cromptoni.jpg#mw-jump-to-license

   そうした長い哺乳類の生きてきた時代がありますが、やはり哺乳類が本格的に繁栄していくのは、恐竜が絶滅した6550万年前以降になります。そこから進化によってさまざまな種の哺乳類が生まれ、今日に至っています。ここではそのひとつ、人を含む霊長類の進化の歩みについて紹介していきたいと思います。

    以前、このシリーズの第7回目の中で、NHKスペシャル「地球大進化」(2004年放送)第1回『生命の星』での巨大隕石の衝突のことを紹介しました。今回もこの章の解説を書くにあたって、同じNHKスペシャル「地球大進化」の第5回『大陸大分裂』の中で、詳しく霊長類の進化について紹介した内容が分かりやすく参考になったので、この章の解説もその多くをその内容から引用しています。

 

f:id:takeo1954:20170317212844j:image人は霊長類(霊長目またはサル目ともいう)に属します。そして、今から1億年〜7000万年前に、最初の霊長類が登場します。といっても、まだ霊長目(サル目)に属する最初の種とはいえ、今日知っているさまざまなサルとは印象がかなり異なります。 例えば下の写真です。これは、霊長類の先祖〝カルポレステス〟の想像図です。 f:id:takeo1954:20170314092512j:image【⬆︎カルポレステス(NHKスペシャル「地球大進化」No.5『大陸大分裂』より)】

    カルポレステスは、霊長類の親戚または祖先とされるプレシアダビス目(絶滅した哺乳類)に属する動物ですが、今分かっている中で初めて物をつかむことのできる手(前足)の構造を持った哺乳類でした。このカルポレステスの化石はアメリカで発見されています。その地層から5600万年ほど前に生息していた霊長類ということが分かっています。そのころすでに恐竜は絶滅していなかったのですが、アメリカやヨーロッパでは、巨鳥「ディアトリマ」が、生態系の頂点に君臨して餌として哺乳類を常に狙っていたので、引き続き夜間活動していました。 f:id:takeo1954:20170314104406p:image

【⬆︎馬の祖先ヒラコテリウムを襲うディアトリマ(同NHKスペシャルより)】

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こうした初期霊長類が、長く樹上生活を続けていく中で、さまざまに進化していきます。引き続きNHKスペシャル「地球大進化」の第5回の内容から進化の過程を見てみましょう。このNHKスペシャル全体を通して〝荒ぶる父  地球〟という言葉が使われています。そうです。地球が誕生してから46億年、この時間軸で見れば、地球は荒れ狂う星なのです。決して生命大量絶滅のビッグファイブだけが荒れ狂った訳ではありません。この霊長類の祖先カルポレステスが登場して間もない5500万年前、地球に大変動が起こります。その要因は、マントルの移動に伴うマントルの上向きの力、スーパーホットプルームです。このマントルの移動で、陸続きだった北米大陸とヨーロッパ大陸が切り離されます。切り離された場所になる今のグリーンランド東部の海底で異変が起きます。スーパーホットプルームによるマグマの上昇が、海底の下にあったメタンハイドレートの大きな塊に当たり、メタンハイドレートは大爆発します。その爆発で海底下の地層を突き破り、さらに海上で自然発火して、高さ数Kmになる火柱を大量に発生させます。2003年の調査で、グリーンランド東部沖の海底には、深さ約3000mの巨大な穴がおよそ800個もあり、5500万年前に出来たことが分かっています。

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f:id:takeo1954:20170316050832p:image【⬆︎5500万年前グリーンランド東部で起こったメタンハイドレートの爆発  (同NHKスペシャルより)】

そしてこのメタンハイドレートの炎上によって、地球上の気温は10〜20℃も上昇し、上昇した気温は500万年以上続きます。この気温上昇によって、地球環境も激変します。ユーラシア大陸と北アメリカ大陸は酷寒の氷河でつながっていましたが、この気温上昇によって氷河は溶け、緑でおおわれるようになります。その結果、ユーラシア大陸から北米大陸へ多くの哺乳類が移動します。また、樹木も広葉樹が大繁殖します。ご存知のように、広葉樹の多くは、木の実、果実をつけます。木の実を餌とする霊長類にとって最良の環境が現れ、さらに繁栄し、多くの霊長類の種が誕生するようになります。地球上の大陸のいたるとこで現在のアフリカの東にあるマダガスカル島のように、広葉樹と広葉樹が重なり合う〝樹冠〟といわれる森が出現します。地球で初めて起こった現象です。f:id:takeo1954:20170316052527p:imagef:id:takeo1954:20170316052550p:image【⬆︎写真2枚 現在のマダガスカル島の広葉樹の森  (同NHKスペシャルより)】

正に霊長類にとって楽園の時代が始まるのです。そんな樹冠と呼ばれる広葉樹の森が現われてから500万年後、霊長類は顔の形を変えた新たな種が登場します。ショショニアスです。目の位置が顔に並んであります。f:id:takeo1954:20170316053914p:image【⬆︎同NHKスペシャルより】

 このことによって視界は狭くなるものの、目に入るものを立体視することが可能となり、より正確な距離感をつかめるようになります。こうして霊長類の進化も進んでいきます。

 

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今から5500万年前、南極大陸は今の南アメリカ大陸、オーストラリア大陸とつながっていました(このころには、すでにインド亜大陸は、南極らか離れ北上し、ユーラシア大陸にぶつかろうとしていた)。そのため赤道で暖められた海流(暖流)は、大陸沿いに南極まで到達していました。このことで、当時の南極は、緑に覆われた温暖なところでした。その後南アメリカ大陸とオーストラリア大陸は、プレートの動きで北上をはじめ、3300万年前には完全に切り離されます。そのため暖流は南極まで到達しなくなり、南極大陸は数千mの氷河と周りを厚い氷で囲まれるようになります。このプレートの動きが地球の気候を激変させ、5500万年前と比べ平均気温で約30 ℃近く下がってしまいます。

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f:id:takeo1954:20170318051842p:image【⬆︎同NHKスペシャルより】

このことで5000万年前には地球全土に広がった広葉樹の森も激減して、赤道近辺の地域に限られるようになってしまいます。f:id:takeo1954:20170318052542p:image【⬆︎3000万年前の広葉樹の分布=緑の部分(同 NHKスペシャルより)】

霊長類にとって天国だった環境は一変し、北半球の大半で霊長類は存在しなくなります。北米大陸で、5500万年前の地層から初期の霊長類〝カルポレステス〟が発見されていることは、最初に紹介しました。しかし、北米大陸からは、広葉樹の森がなくなって以降、今日に至るまで霊長類(人は除く)は存在しなくなります(どういう訳か、南米大陸にも3000万年前の地層から霊長類の化石が発見されていないという)。霊長類はアフリカを中心に生き延び、進化していきます。1700万年前、アフリカ大陸とユーラシア大陸が陸続きになると、再び霊長類はアジアにも広がっていきます。

   更に、1000万年以降にアフリカ大陸を中心に、新たに気候変動が始まります。一つはヒマラヤ山脈の形成です。インド亜大陸とユーラシア大陸が陸続きになるのが約5000万年前。そして、ぶつかった境界線上で少しずつ隆起が始まり、今から700万年前には、5000m級の大山脈が形成されます。そのヒマラヤ山脈の影響で、アフリカ大陸に乾燥した風が流れるようになります。f:id:takeo1954:20170320105333p:image【⬆︎ヒマラヤ山脈の影響で乾燥した大気が流れこむ  (NHKスペシャル「地球大進化」No6『ヒト』より)】

   それから、もう一つはアフリカ大陸東部を走る〝大地溝帯〟です。大地溝帯はアフリカ大陸東部の真下にあるマントルの上昇の力、スーパープルームによって、1000万年前〜500万年前ころから隆起が始まり、幅35〜100Km、総延長7000Kmに及ぶ断層、2000m級の高地を形成します。このことによってインド洋からの湿った空気は、大陸の西側には乾燥した空気に変わるようになります。こうして広大なサハラ砂漠とサバンナ(草原地帯)が生まれます。f:id:takeo1954:20170320150607p:imagef:id:takeo1954:20170320150614p:image【⬆︎同「地球大進化」No6より】

 

   そうした大きな環境の変化の中で、絶滅した霊長類の種も多くあります。しかし、生き残った霊長類は、厳しい環境の中で進化を続け、猿人により近づいていきます。進化の特徴の大きな変化の一つが、〝眼〟です。今から3300万年ほど前、霊長類で最初の真猿類(人に近いサルらしいサル)カトピテクスが登場します。このカトピテクスは、霊長類ではじめて眼球を骨で包む〝眼窩後壁〟の頭蓋骨を持っていました。このことでカトピテクスの目は、前方の焦点が揺らぐことなくものを見ることができました。それともう一つフォベア(中心窩)です。フォベアは眼球奥に視細胞が集中してあり、前方の物体をきめ細かく見ることを可能にしました。 f:id:takeo1954:20170320113608p:imagef:id:takeo1954:20170320113714p:image【⬆︎カトピテクス   想像図  (NHKスペシャルNo5『大陸大分裂』より)】f:id:takeo1954:20170320083616j:imageこれと平行して真猿類は、表情筋を発達させていきます。f:id:takeo1954:20170320173541p:imagef:id:takeo1954:20170320173552p:image【⬆︎真猿類のさまざまな表情(NHKスペシャル「地球大進化」No6より)】

そして、真猿類は仲間のさまざまな表情を、優れた目で見て判断できるようになります。そうです。仲間の顔の表情を読み取って、仲間同士のコミュニケーションをとるようになります。それによって鳥などが群れて行動するのとは別次元のサル社会をつくります。例えば、子供を持つ母ザルが餌を探すために単独で活動する時、別の母ザルがその子供の面倒を見るなどです。

   こうした進化の先に、およそ700万年前の猿人の登場につながっていくのです。

 

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⚫︎6550万年前の巨大隕石の衝突する以前の地球では、哺乳類は恐竜が支配する世界で、細々と暮していた。ただ恐竜から身を守るためのさまざまな進化があった。子どもは胎内で十分育ててから産む。母乳を分泌し、巣穴から離れず子育てする。もともと温血だったが、体毛を増やして恐竜の出歩かない夜間にも狩りができた。そんな哺乳類の進化があった中で、巨大隕石の衝突があり、恐竜は絶滅した。その結果、哺乳類は草食性の小さなネズミのような動物から飛躍的に進化していく。


⚪️多様性の源
・小さなネズミほどの大きさの哺乳類は、300万年後にはイヌくらいの大きさになり、更に時間を下って、始新世( 5500万年前から3500万年前)と呼ばれる時代になると、驚くほど多様な哺乳類であふれるようになる。森には、シカ、イノシシ、クマ、パンダ、サル、そして類人猿が暮らし、草原では、ウマ、ウシ、バイソン、ヒツジ、ブタ、シマウマ、キリン、カンガルー、ロバが草を食み、地中では、ウサギ、アナグマ、ハリネズミ、ネズミ、キツネが穴を掘り、川や沼では、カバ、ゾウ、ビーバー、カワウソが水しぶきをあげる。また、砂漠ではラクダ、ラマが歩き、海をクジラ、イルカ、アザラシ、セイウチが泳ぎ、空をコウモリが飛びかった。
・多様な哺乳類の進化は、地球の地殻の移動と深い関係がある。このころ(始新世の時代)超大陸パンゲアは、二つの巨大大陸、ローラシア大陸とゴンドワナ大陸に分かれており、更に今日ある諸大陸へと分裂していった。大陸が離れていくにつれて、島が生まれ、その上にいた動物や植物は、新しい環境に適応していった。それらは世代を経るにしたがって、大陸ごと、島ごとに異なる種へと進化していった。
・哺乳類は大きく三つのグループに分かれた。単孔類、有袋類、有胎盤類だ。そのうち有胎盤類、有袋類が種としてはほとんどとなる。


⚪️単孔類
・カモノハシ科とハリモグラ科の二つのみ。哺乳類の中で唯一卵を産むグループ。また哺乳類で唯一電気センサーを備えていて、獲物が出す生体電流を感じることができる。


⚪️有袋類
・代表的な動物がカンガルーとコアラ。有袋類の子どもは、とても小さく生まれ、母親の腹をはい上がって袋に入り、その中で母乳を飲んで成長する。有袋類も多様に進化したが、4万年ほど前、人類がさまざまな動物を持ち込んでやってくると、その生態系はむしばまれていった。
・絶滅した有袋類の一つに、肉食性のタスマニア・タイガーがいた。最後の1頭が1937年にタスマニアのホバート動物園で死んだ。


⚪️有胎盤類

三つ目のグループは有胎盤類で、哺乳類最大のグループだ。人間もこの仲間で、子どもが十分に成長するまで体の中で育てる。胎児と母体は「胎盤」で結びついており、母親から胎児の血液へ栄養分が送られ、胎児から母親の血液へ老廃物が送られている。


⚪️霊長類
・哺乳類の一つでサル目ともいう。代表的なグループは、旧世界ザル(オナガザル科)、新世界ザル(広鼻猿)、類人猿。
・サルは、アフリカで進化する。そして2500万年ほど前、一つの集団が南米大陸に渡る(いかだのようなものに乗って偶然漂着したと思われる)。もう一つのグループは、陸伝いにインド、マレーシアなどアジアにたどり着く。
・アジアにたどり着いたサルは、オランウータンやテナガザルに進化する。そのどちらかが、またアフリカに戻る。そしてアフリカでゴルラ、チンパンジー、ボノボなどに進化する。
・人類とチンパンジーのDNAの配列は、96%以上が同じであることが分かっている。そのデータから、人類の系統はおよそ700万年前にある類人猿の系統から分岐したとされている。

 

   これでやっと第1部の終了です。次回は、本書のテーマから離れて、閑話休題(余談)として投稿したいと思います。外国の中で最も気になる国であり、また尊敬すべき国であり、かつ学ぶべき国である。そして、またこの本の原作者の生まれた国である英国。その英国のことについて少し紹介したいと思います。本書が4部作なので4回に分けての投稿を予定しています。