🔶《第8回》私の『137億年の物語』

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   恐竜の中で最強といわれているのは、ご存知のティラノサウルスです。恐竜の中だけでなく、地上に生きる動物の中で史上最強といわれています。体長は最大13m、体重は最大6t、噛む力=咬合力は最大8tにもなったといわれています。f:id:takeo1954:20170228053322p:image(2016.9.18 NHKスペシャル「完全解剖 ティラノサウルス…」より)

ちなみに現在生きる咬合力の強い動物と比較すると、ライオン0.4t、サメ0.6t、カバ1t、ナイルワニ2.2tなどとなっています。過去に存在した動物で、このシリーズの第5回で紹介した怪魚ダンクルオステウスが5.5tといわれています(ティラノサウルスの咬合力の数値など、本文のものと異なる。ウィキペディアティラノサウルス」など参照)。なので恐竜ティラノサウルスの噛む力は、過去の動物を含めて圧倒的な力を持っていて、正に史上最強です。また、視力や嗅覚に優れ、知能の点でも大変優れていたといわれています。

 

   昨年9月18日(日)にNHKで、NHKスペシャル「完全解剖 ティラノサウルス〜最強恐竜 進化の謎」が放映されました。ナビゲーター役で、ディーン・フジオカさんが出演した番組です。特に男性には興味をそそられるテーマだったので、ご覧になった方も多いと思います。その内容は、「ティラノサウルスの祖先は、今の中国辺りから当時陸続きだったアラスカを経由して、北米大陸に移動する。移動したときのティラノサウルスの祖先は、小型の恐竜だった。そして、行き着いた北米大陸f:id:takeo1954:20170228044407p:imagef:id:takeo1954:20170228044444p:imageで、動物界の頂点に君臨していたのは写真にある〝シアッツ〟で、体長は11mほどあり、ティラノサウルスの祖先が闘える相手ではなかった。それが数百万年の進化の中で、立場は逆転するようになる。頭部が大きく(1.5m)、横にも広がり、目の位置が変化したことで、視覚の遠近感を把握する能力が高まり、獲物を捕らえる能力が向上した。知能も高く、今のライオンのようにチームで獲物を捕らえる能力もあった。数頭が獲物を追う。他の数頭は逃げ道で待ち伏せして獲物を捕らえることが出来た。また、鳥とティラノサウルス(恐竜)の祖先は、共通のDNAの配列を持つ。それと中国でティラノサウルスの祖先(コエルロサウルス)の化石から羽毛のついた化石が発見さた。このことからティラノサウルスも羽毛で覆われていた(写真)」。と、このNHKスぺシャルでは説明している。f:id:takeo1954:20170228053143p:imagef:id:takeo1954:20170228053207p:imageこのシュミレーションによってグラフィック映像にされた写真を見ると、スティーヴン・スピルバーグ監督のジュラシック・パークで登場したティラノサウルスレックスの印象とまったく違っています。これからティラノサウルスなど、大半の恐竜の再現図は上の写真のようになるかもしれません。

   ただし、ティラノサウルスなどの恐竜が、成長して大人になってからも羽毛で覆われていたかどうかは諸説あって異論も多いようです。そんな訳で、ティラノサウルスの想像図は羽毛のあるもの、それから従来通りの羽毛のないものとの二つのパターンが存在し、しばらく使用するところによって異なる併用が続くのではと思います。

 

   ところで、このシリーズの前回第7回の投稿でも説明しましたが、ご存知ように今から6550万年前、メキシコ ユカタン半島沖に、直径10Kmの巨大隕石が衝突したことで、恐竜は絶滅してしまいます。ティラノサウルスのように、生態系の頂点に君臨していても、地球環境の激変が起こったときは、最も対応力の乏しい動物といえます。そういう点から見れば、バクテリアなどの微生物や菌類などの小さな生物が最も対応する力があるのかもしれません。それらは全地球上のいたるところに隈なく存在します。存在する場所も地中深くだったり、空中を漂ったりしています。巨大隕石の衝突で、相当数が死滅しても生き残るものはそれ以上で、確実に生命をつないでいます。爬虫類や哺乳類も、小型で環境に対応する能力のあるもののみが、命をつなぐことができたということになるのでしょう。

 

 

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ペルム紀の大量絶滅によって、地球上の生物の90%以上が消えた。その絶滅後の地球上で繁栄したのは菌類だった。この時代の地層の化石として残っているのは、ほとんどが菌類だ。哺乳類の祖先である単弓類で生き残ったのは、リストロサウルス一種だけだった。もしこの種も生き残らなかったなら、人類はこの世にいなかっただろう。
・リストロサウルスの系統のみが繁栄していたころ、まったく新しい爬虫類が登場した(単弓類からの進化ではなく、双弓類から進化)。それは恐竜だ。それまでの四肢動物のように、地上を這うように歩くのではなく、四肢が胴体の真下にあつたので、長い距離を早く移動することができた。それが恐竜の繁栄の大きな要因となる。恐竜の繁栄は他の陸上動物の衰退を招くことになる。


⚪️さまざまな恐竜たち
・ディプロドクスなど、最大級の恐竜の多くは竜脚類に属していた。それらは草食性で、四足歩行し、大きなものは体長が30m、体重が11トンにもなった。
・鳥脚類に属するヒプシロフォドンは、人間の腰に届くかという小さな恐竜だが、シカのように速く走ることができた。9000万年にわたつて繁栄したが、それを可能にしたのは逃げ足の速さだったのだろう。
・イグアノドンは、二足歩行と四足歩行のどちらも可能な恐竜だ。草食性で体長は成長すると10mほどになった。前あしの爪が鋭利な短剣のようで、防御する際はこの爪で撃退した。
・地球の陸地を歩いた最強の生物は、ティラノサウルス・レックス(Tレックス)だろう。2本足で歩き肉食。体長は12m、体重は現在のゾウほどもあった。アゴの力はライオンのアゴの8倍強かったと推定され、そのアゴで獲物の骨を噛み砕き、栄養豊かな骨髄まで食べていた。


⚪️社会生活を営んだ恐竜
・恐竜の大半は穏やかな草食動物で、地球上で初めて社会的集団を形成した。米国モンタナ州では、ある草食恐竜の1万頭に及ぶ群れの化石が発見されている。火山の有毒ガスを吸って倒れ、火山灰に埋もれて化石になったが、その化石は1.5Km以上にわたって連なっていた。
・現在恐竜の営巣地は世界で200ヵ所以上で見つかっている。恐竜の多くは、毎年同じ繁殖地に戻って卵を産み、子どもが成長するまで群れの中で育てた。


⚪️恐竜の大量絶滅
・6550万年前、白亜紀は終焉を迎え、新生代第三紀が始まっていた。そのころ恐竜には住みにくくなっていた。大気中の二酸化炭素濃度が上昇して温暖化が進み、加えて超大陸パンゲアが分裂していき、気候が変化していく。恐竜の生息地も分断、細分化されて、恐竜どうしが生息地を奪い合うようになった。その結果、恐竜全体が減少していった。
・そんなときに巨大隕石の衝突が起こる。直径10Kmの巨大隕石が、時速11万Kmの速度で地球に向かい、メキシコ、ユカタン半島の先端に衝突する。隕石は直径160Km超のクレーターを形成し、半径1000Km以内のすべてを破壊しつくした。衝突地点周辺では、激しい地震が起こり、高さ数十mを超える津波が、地球上の海岸線全域を襲った。また衝突地点の真下にあった有毒の硫黄の塵を、地球上に大量に撒き散らし、1年近く濃い刺激性のガスに覆われた。
・インドにある溶岩台地「デカン・トラップ」は、このときの巨大隕石の破片が衝突したことで巨大火山が連続して噴火し、溶岩が数百万平方Kmに広がったものといわれている。
・2億5200万年前のペルム紀の大量絶滅後、地球上で繁栄したのは菌類だったが、今回最初に繁栄したのはシダ類だった。
 

   次回第9回は、内容がガラッと変わって「花と鳥とミツバチ」です。

🔶《第7回》私の『137億年の物語』

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   この章は、石炭紀(3億5900万年前〜2億9900万年前)から、爬虫類が支配するペルム紀、そして2億5200万年前(2億5100万年前とする説などがある)の「ペルム紀の大量絶滅」までのことが内容です。とにかく「ペルム紀の大量絶滅」がすごい。想像を絶する事態が起こったのです。生命誕生から今日まで、地球上で大量絶滅といわれるものが5回起きています。それをビッグファイブとも呼んでいます。そして、その中でも最大級の大量絶滅がこの「ペルム紀の大量絶滅」でしょう。このシリーズの投稿で、第3回の「地球と生命体のチームワーク」の中でも、プレートの移動の説明の中で既に「ペルム紀の大量絶滅」のことについて触れました。生命がどのくらいの率で絶滅したかは、はるか昔のことなのでその推定は難しいでしょう。当然諸説あります。この本では全生物の96%が絶滅したと書かれています。ウィキペディア フリー百科事典では、海洋生物の96%、全生物の90%〜95%が絶滅した(ウィキペディア :「ペルム紀」2017年2月1日5:06更新)とあります。全生物のほとんどが絶滅するという驚きの数字です。しかし、このペルム紀後期の大量絶滅に至った凄まじい正に地獄の世界を知れば、「よくぞ数%の生物が残ってくれた」とも思ってしまいます。

 

   それでは改めてペルム紀末の地獄の世界を見てみましょう。シベリアン・トラップ(シベリア・トラップ)についてもシリーズ第3回目で紹介しましたが、改めてその規模や場所など、シベリアン・トラップの概要を見ていきましょう。

 f:id:takeo1954:20170210051406j:image〈出典〉ウィキペディア  フリー百科事典 「シベリア・トラップ」 更新日時  2016年 11月26日 7:30

 https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:Extent_of_Siberian_traps-ru.svg#mw-jump-to-license

     上の地図で、黒い線で囲ったところがシベリアントラップといわれている場所になります。広大なのが分かります。ドイツ以西の西ヨーロッパに匹敵する面積です。この広大な土地に遥か昔に爆発的な噴火あり、その証拠となる溶岩が残っているのです。その大量の溶岩が噴出した場所は、シベリア大陸としておよそ5億年前から存在し、安定した基盤の大陸だったところです。なのでプレートの移動によって大陸が引き裂かれた場所に大量の溶岩が噴出したのではなく、もともとあった大陸を突き破って溶岩が噴出しているのです。その大陸を突き破ったもとになったのは、このシリーズ第3回で紹介したマントルのスーパープルーム(プリューム)だといわれています。もちろんこのスーパープルームの発生は、プレートの移動に伴う大陸同士の衝突が関係していると推測されます。

 

   プルームには、マントルが上向きに移動するホットプルームと下向きに移動するコールドプルームがあります。こちらもウィキペディアからの引用になりますが、「現在南太平洋の下は、スーパーホットプルームが存在し、大地溝帯グレート・リフト・バレー)が形成された原因であり、南太平洋に点在する火山の源であると考えられている。また、ホットプルームは外部マントルと内部マントルの境目の深さ670Kmの部分でいったん滞留した後に上昇するため、通常では地上へ激甚な影響を与えることはない。」。一方現在もユーラシア大陸の東、シベリア東部にあたる場所の地中深くのマントルには、下向きのスーパーコールドプルームがあります。「スーパーコールドプルームは周辺のプレートを吸い寄せるため、陸地を1か所に集めて超大陸を形成する原動力にもなる。」といいます。そのためその上にある陸地、シベリア大陸はプレートに比べて比重が軽いので、沈み込むプルームに対して浮いた状態になります。従って安定した陸塊、大陸になるといわれています。

 f:id:takeo1954:20170215052336j:image〈出典〉 ウィキペディア  フリー百科事典 「プルームテクトニクス」更新日時 2016年12月24日 13:49

https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:Lower_Mantle_Superplume.PNG#mw-jump-to-license

    しかし、スーパーコールドプルームによってプレートが吸いよせられて超大陸ができる。そして今度はスーパーホットプルームの甚大な力が強まり、超大陸が引き裂かれるプレートの動きが生まれる。シベリアントラップにつながったのはこの時だといわれています。通常ホットプルームマントルの上昇対流)は、一旦内部マントルと外部マントルの間に滞留しますが、この時は滞留することなくマントルの溶融したマグマが、マントル上部に到達し、本来安定した大陸塊であるシベリア大陸の地殻をも突き破って超巨大噴火が始まった。そんなプロセスをたどったと思われます。改めてその時のシベリアントラップが形成された噴火の規模です。第3回目の投稿で、「富士山の噴火の規模とは比較のしようがない」と書きましたが、その比較がこれもウィキペディアになりますが、その「ペルム紀」に「噴火した溶岩の量は、富士山の過去1万年間で噴火した溶岩の量の10万倍である」とあります。とにかく桁違いの超巨大噴火でした。そしてそれは地球環境を激変させました。

 

   大噴火は、先ず溶岩とともに有毒のガスと灰を噴出させます。そして噴煙(火山灰)は地球全体を覆い、昼も夜も区別出来ない暗黒の酷寒の世界が50年前後続く。やっと噴煙が収まると今度は噴火によって大量に放出された二酸化炭素温室効果のために気温と海水温を急上昇させます。海水温上昇は海底のメタンハイドレートを不安定にさせ、メタンガスを放出させ、更に二酸化炭素濃度を上げます。こうして地上も海中もほとんど無酸素状態になります。海中の無酸素状態は1000万年〜2000万年続いたといわれています。こんな状態では生物が生き残ることは絶望的だったことが分かります。「よくぞ数%の生物が生き残ってくれた」という気がします。この中の一つが私たちの祖先になるからです。

 

   ところで、この章の中に驚くべきことが書かれています。「2006年6月に、南極大陸東部の氷床の下に、直径約480Kmのクレーターが発見され(2億5100万年ほど前の衝突とされる)、巨大隕石の衝突も大量絶滅に関与したのではないかと考えられるようになった。」とあります。この次の章で登場する恐竜の大量絶滅につながった6550万年前にメキシコ、ユカタン半島先に残っている巨大隕石によって出来たクレーターの直径は160Km超とされています。だから南極大陸東部のクレーターの方が面積で数倍大きい。衝突した隕石の大きさを比較すると、6550万年前のものが直径10Km、ペルム紀のものは直径50Kmと推定されています。この直径で両方の体積を比較すると、ペルム紀に衝突した隕石は、恐竜絶滅の要因とされる隕石のざっと125倍です。当然破壊力も体積比と同じということになります。

 

    話しがまた変わりますが、今から13年前の2004年の4月から11月にかけ、NHKでNHKスペシャル「地球大進化〜46億年・人類への旅」という番組が、全6回で放映されました。俳優の山崎努さんがナビゲーターとして出演した番組で、視聴した方も多いと思います。その番組の第1回目で、40億年前に地球に直径約400Kmの巨大隕石が衝突したという科学者の説に基づいて、同じ規模の巨大隕石が「もし現在の地球に衝突したら」という内容で、衝突の場面を科学の専門家のシュミレーションで映像化し放映されました。衝突の場所は日本の南方1500Kmの太平洋の上です。その衝突のシーンの一部を写真ですが紹介します。

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【巨大隕石(直径400km)衝突の瞬間。衝突する直前の速度は時速7万2000Km】

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【このクラスの隕石の衝突では、津波ではなく、地球の地殻を巻き上げながら押し寄せてくる「地殻津波」となる。日本が呑み込まれる瞬間】

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【衝突の爆風で、地殻の破片(約1Km大)を地上数千Kmの宇宙に放出し、その後地球の引力で隕石となって落ちてくる。】

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【衝突地点(数千Km)の温度は太陽の表面温度とほぼ同じ4000〜6000度。この温度は地球の岩石を一気に気体(岩石蒸気)にして、地球全体に広がる。】

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【巨大隕石の衝突でできたクレーターの直径はおよそ4000Km。クレーター周辺は高さ7000mの山脈のようになる。】

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【高温の岩石蒸気が全て地球を覆い、海水は全て蒸発し、更に海底の岩石も溶けだすほどの高温で覆われる。】

 

    ペルム紀末、南極大陸東部に衝突した巨大隕石は、上で見た直径400Kmの隕石より小さいものの、6550万年前の恐竜を絶滅に至らせた巨大隕石の125倍の超巨大隕石です。同じように巨大な地殻津波を引き起こし、全地球を高温の岩石蒸気で覆ったでしょう。当然地球内部のマントルの奥深く到達し、甚大な衝突による衝撃圧力を与えます。同じ時期に丁度反対側のシベリアシベリアントラップとなる巨大噴火が起きています。ということは「シベリアントラップの巨大噴火は、この巨大隕石の衝突が引き起こした」。そんな気がします。詳しく分かりませんが、もうそんな仮説が発表されているかもしれません。

 

 

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⚫︎この章は、魚から陸上動物への途中形態の動物から爬虫類が支配するペルム紀、そして〝ペルム紀の大量絶滅〟までの内容。


⚪️陸に上がった魚
デボン紀後期の3億7500万年前、肉質のヒレを持つ魚と四肢動物の特徴を併せ持ったテイクターリクと呼ばれる動物(成長すると3メートルにもなった)が現れ生息した。
・さらに数百万年後イクチオステガという最初の真の四肢動物が登場した。もはや魚ではなくわれわれの遠い祖先になる。
・約3億4000万年前、イクチオステガから進化し、現両生類の祖先と見られる分椎目(ぶんついもく)が登場する。おとなのワニほどの大きさのものからイモリくらいの小さいものまでいて地上で繁栄する。生まれるとしかし、大陸が集まって巨大な超大陸が生まれると、産卵が水辺に限られた両生類にはさらなる繁栄は難しくなった。


⚪️人類の遠縁あらわる
・3億1500万年前ごろ両生類と違い、陸上で産卵できる爬虫類が登場する。最古の爬虫類はヒロノムスだ。その後哺乳類の祖先で人類の遠縁にあたる単弓類が出現する。頭部の左右に側頭窓という穴があり、その下にあるアゴを大きく開け、力強く咬むことができるようになった。
※側頭窓は耳にもつながっていく。
・単弓類で最も繁栄した種の一つは、ディメトロドンで、背中に大きな帆を持っていた。この帆は熱交換器の役割を果たし、他のどの動物より早く体温を上げることができた。ディメトロドンは、哺乳類の温血性を先取りしていたのだ。


⚪️ペルム紀末の大量絶滅
・今から2億5200万年前、地球上のあらゆる生物は劇的な終焉を迎える。〝ペルム紀の大量絶滅〟である。
・そのころには、すべての大陸は1カ所に集まって、超大陸パンゲア〟を形成していた。その他は〝パンサラッサ〟と呼ばれる広大な海洋が広がっていた。これによって海流は劇的に変化し、激しい季節風が襲い、暑く乾燥した時代が訪れた。
・巨大な大陸が衝突すると、火山の噴火が増え、超火山が出現する。その当時の超火山の証拠が今も残っている。シベリアン・トラップだ。この超火山は100万年以上にわたつて噴火し続けた。
・2006年に南極大陸東部の氷床の下に、直径約480Kmの巨大クレーターが発見された。パンゲア出現の時期に巨大隕石の衝突があったと考えられるようになった。そのため巨大隕石衝突と超火山の噴火の二つが生物の大量絶滅に影響したとされるようになっている。
・超火山の大噴火は、噴火当初猛毒の灰が吹き上げられ、スモッグとなり、全地球を暗黒の世界に陥れた。昼も夜もない酷寒の世界が50年続く。その後火山灰が収まると、今度は噴火により放出された大量の二酸化炭素によって、気温と海水温を上昇させ、海からは大量のメタンガスが噴き出し、更に地上の気温を上昇させた。その結果、地球上の生物の96%が絶滅したと見られている。

 

    次回第8回のテーマは「恐竜戦争」です。

 

🔶《第6回》私の『137億年の物語』

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   今回のテーマの年代は、前章とほとんど重複する4億年前から2億5200万年前の話しで、地球上の陸地で起こった出来事になります。

 

   この章でもいろいろな驚きがあります。その中から私が最も印象に残った驚きの出来事を三つほど紹介したいと思います。

 

   前回の章で、海や川で生きる動物のいくつかが、地上に進出するきっかけとなったのは、地上の酸素濃度の上昇であると書きました。実は、そのことが最も印象に残った中の一つです。現在私たちが生きている地球上の酸素濃度は21%です。それが3億5000万年前には、地球上の酸素濃度は35%まで上昇したといわれています。なぜ、そこまで地球上の酸素が上昇し、その後酸素濃度は現在の21%まで下がってしまったのか。

   酸素濃度は、海の中にいるシアノバクテリアなどの微生物や藻などの光合成によって、少しずつ大気の酸素濃度を増やしていきましたが、劇的に酸素濃度を増やしたのはやはり樹木の登場と繁殖範囲を地上の大半に広げていったからです。このころは地質時代区分で、石炭紀(3億5920万年前〜2億9900万年前)といわれているように、その地層から石炭が発掘される層です。そうです。その時代の木が化石化したものです。この化石の元になったのがリンボク(現在ある植物のリンボクと違い、高木になり、木の高さ40m、幹の太さ直径2m位になる)です。このリンボクは、いたるところにかなり密集して繁殖したといわれています。それと地上で極めてよく繁殖したのが、ヒカゲノカズラなどのシダ類です。これらの植物を中心に地上の広範囲に及ぶ繁殖が、一斉に光合成を行うことによって大気中の二酸化炭素を取り込み、水を分解して酸素をつくる。その結果酸素濃度もどんどん上昇していったのです。ちなみに、酸素濃度の上昇は、酸素と紫外線が反応してオゾン層も形成していく。これによって地上に届く紫外線の量が減少し、動物が生きていく条件が整えられていく訳です。また、酸素濃度の上昇は、巨大とんぼ(カモメほどの大きさがあった)などを出現させることにもなります。

   さて、35%まで(これ以上増えると風による木の枝どうしのこすれなど、自然現象で発火してしまうような状態になる)上昇した酸素濃度が、今度は何故減少に転じたのか。これもおもしろいですね。この世で進化しているのは、動物や植物だけでなく、微生物や菌類も同じで常に進化しています。この石炭紀の時代まで、地球上には木を腐食させる菌類=木材腐朽菌(白色腐朽菌、褐色腐朽菌など)が存在しなかった。石炭紀の後半の3億年ほど前から木材腐朽菌が登場して、樹木の細胞壁を強くしているリグニンを分解するようになる。そして、菌がリグニンを分解するときに、今度は酸素を多く必要とするようになります。腐らずに寿命を終えたリンボクなどが大量に地上に横たわっていたので、急速に木材腐朽菌が繁殖して木を腐らせる。それと同時に急速に今度は地球上の酸素濃度が減っていったというわけです。この木材腐朽菌の大半を占める白色腐朽菌、実は皆さんがよく知っているキノコ類で、椎茸、舞茸、えのき茸もその仲間です。

f:id:takeo1954:20170207052423j:image 〈出典〉ウィキペディア  フリー百科事典 「地球の大気」  更新日時   2017年1月23日  19:50

https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:Sauerstoffgehalt-1000mj2.png#mw-jump-to-license

 

    二つ目の驚きです。先ほどの一つ目のことと大いに関係することです。「ああ、そういうことだったのか」と納得したことでもあります。現在も石炭は、私たちの生きる社会の中で重要なエネルギー源、燃料として広く利用されています(現在は中国が世界の消費量のほぼ半分を占める)。石炭の埋蔵量は、今の消費量を続けても100年以上使えると試算されています。無煙炭などの高品位の石炭(炭素比率が高い)は、埋蔵量が少なくなっているようですが、褐炭などの低品位の石炭を含めると年々埋蔵量は増えているようです。これまで不思議に思っていたのは、人類がどうしてこんなに膨大な量の石炭を100年以上に渡って採掘し続けられ、これからもさらに長期に渡って採掘できるのか、という点でした。謎が解けました。高さ40m、幹の太さ直径2mもあるようなリンボクが寿命が尽きて地上に倒れる。石炭紀の時代には、まだ木材腐朽菌が存在しないので、1万年、10万年経ってもリンボクは腐らず、昨日倒れたばかりのような状態でうず高く積み重なっていった。そして数千万年、数億年の長い時間の経過の中で、堆積物で覆われ、プレートの移動で地殻がマントル内に入り込む影響で地中深くに押し込められていく。そして、長期に渡る地熱と地下深くにとどまることによる甚大な圧力がかかる。そんな状態が数億年続くことで、膨大な量の石炭が作られた、ということになります。逆に、現在大量の樹木を切り倒して積み上げ、そのままの状態で数億年置いたままにしていたら石炭に変化するか、といったらもうお分かりと思います。木材を切り倒してそのまま野ざらしの状態で、数十年、数百年、野外に置いておいたら木材腐朽菌が木のリグニンを分解し、その後をバクテリアが無機化してしまう。ほとんど腐葉土のように土化してしまうのです。

 

   そして三つ目の驚きです。この世の中で最も巨大な生物は何か知っていますか? もちろん動物ならシロナガスクジラでしょう。でも動物だけではなくて、植物などこの世に生きている生物すべてが対象です。アメリカ合衆国西海岸の高さ80mを超す巨木=ジャイアント・セコイアか?  違います。答えは菌類、きのこです。きのこは、単独で生きているのではなく、白い菌床でつながっています。目に見えるきのこは、植物でいえば花や果実にあたります。きのこときのこをつなぐ菌床は、植物、樹木でいえば幹や根にあたります。この本で紹介されているように、1998年にアメリカオレゴン州で総面積9平方Kmにおよぶオニナラタケの菌床が発見されました。推定重量600トン、およそ2400歳とみなされています。おそらく生物の寿命でも最長ではないでしょうか。

 

 

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⚪️最初に地上に現れた植物は、海藻やコケに似たどろどろしたものだった。それらはシアノバクテリアの子孫で、海や河や小川のすぐそばにへばりついて生きていた。その後ほぼ同じ場所でスギゴケ、ゼニゴケ、ツノゴケなどしっかりした根や葉がなく、水辺の近くでのみ繁殖する植物の時代をへて、4億2000万年ほど前に内部に菅をもつ「維管束植物」が現れた。

 

⚪️木と葉という発明
・樹木の祖先である維管束植物は、イギリスのライニーで完璧な形の化石が見つかる。化石の調査から、維管束植物はリグニンという細胞壁を強くする物質を持っていた。そのため雑草と違い干ばつのときも直立したまま生きのびることができた。
石炭紀(3億5900万年前)になると、維管束植物の子孫ヒカゲノカズラ類が大繁殖する。その仲間レピドデンドロンは幹の太さ直径2メートル、12階建のビルに相当する高さを誇った。これらの樹木のおかげで、それから数億年の時を経て、人類は石炭という化石燃料を使って産業革命を起こし、今も不可欠なエネルギー源として使われている。
・2億7000万年前からから、樹木は主役が入れ替わっていく。新たな主役は〝真葉植物〟だ。大きな葉を持つことで、光合成がより効率的に行われるように進化していった。


⚪️菌類との共生関係
・木と菌類は密接な共生関係にある。枯れ葉や死んだ生物を発酵によって分解し、木が栄養として吸収できる物質に転換している。また菌類は木が光合成によって作られた糖分をもらっている。
・菌類のほとんどは地下に暮らしている。それらは菌糸とよばれる糸でつながって、菌糸体という塊を形成している。菌糸体は超巨大になることがある。1998年に、アメリカのオレゴン州で発見されたオニナラタケの菌床は、総面積が9平方Kmにおよび、推定重量600トン、およそ2400歳と見なされている。現在、顕花植物の80%が地中の菌類と共生関係にあるといわれている。


⚪️蒸散作用と種子の登場
・木は、高いところまで水を届けなければならない。気圧の力では10メートルが限界だ。それを解決したのが浸透圧差を利用した蒸散作用。木の葉の気孔は環境条件によって開閉し、必要に応じて水分を蒸発させる。水分が失われると樹液の濃度が高くなるので浸透圧差が生じて幹から水分が吸い上げられるのだ。
・木も最初は菌類と同様に子孫を残すため、胞子を風で飛ばしていた。これだと胞子が湿気のあるところに落ちないと発芽できない。これを解決したのが種子だ。最初に種子を作り出したのはソテツで、その起源は2億7000万年前にさかのぼる。更に木は有性生殖という方法を身につけるようになる。


⚪️昆虫の登場
・3億5000万年ほど前の石炭紀には、豊かな森林によって、地球上の酸素濃度35%にまで上昇したとみられている(現在は21%)。この高い酸素濃度が海から地上に生きる生物を増やしていき、生物の体を大きくしていくことにもつながった。昆虫の出現もそのころだ。その一つトンボは現在のカモメほどの大きさがのものもあり、空を支配した。さらにトンボとは別の甲虫は、ソテツの雄花の花粉を身にまとい、雌花まで運んで受粉させる有性生殖に関わることになった。

 

⚪️生物が土をつくる
・ミミズや菌類、そして甲虫をはじめとする昆虫は、地上の生物を支える貴重な資源である土壌を整えてくれる。落ちた葉や腐った木などをリサイクルして養分に変える。生物の存在が畑で野菜を育ててくれる柔らかい黒褐色の土をつくる。また土は風、水、氷、プレートの移動によって数百万年単位で作り変えられている。

 

   次回は、陸上に上がって繁栄し始めた動物たちと突如襲ったペルム紀の大量絶滅が主な内容となります。タイトルは「進化の実験場」です。

🔶《第5回》私の『137億年の物語』

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   しばらくブログ投稿を休んでいましたが、再開します。『137億年の物語』の5回目からまた続けます。

 

  この章は、今から約5億年前のカンブリア紀から約3億6000万年前のデボン紀の間に栄えた代表的な海の中に生きた生物の紹介になります。

 

   この時期の地球は、陸上では本格的な動物は現れていません。今から4億2000万年ほど前に最初期の植物やコケ類が登場し、ミミズのような小さな生き物が海から移り住みます。それから数千万年ほど経てから甲虫のような昆虫が登場するようになる。そんな時代です。陸上の本格的な動物、イクチオステガが登場するのは、デボン紀後期の3億6000万年ほど前のこと。そうです、この時代の生き物は、海の中の動物が全盛で主役です。今も海の中で生きているサンゴやクラゲ、サメは、この時代に登場します。また、アンモナイトや板皮類、ウミサソリなど絶滅した動物も多くいます。この時代、動物は海の中で多様に進化していきます。

 

   さて、この時代の海の中、かなり危険がいっぱいのところになっていたと思います。さまざまな種類のサメが登場します。そしてそのサメをも一噛みにして捕食してしまう板皮類がいました。その中のダンクルオステウスは、体長が最大10mもあったといい、正に海の生態系ピラミッドの頂点に君臨していました。また、体長は2mを超え、尾の先に毒針を持つウミサソリも海の中を回遊したり、海底を歩いたりしている。多くの海に生きる動物が身を潜め、細心の注意を払って生きてる。そんな世界がこの時代の海の中の世界だった。おそらく今の時代より海の中や川の中は、はるかに危険な場所だったと想像します。

 

    この海や川の水中の危険から逃れようとしたことが、もともと海の動物だったものが陸上に上がろうとした要因のような気がします。もちろん、別の大きな要因もありました。シアノバクテリアなど、数十億年に渡る微生物による光合成や、陸上にシダ類などの植物が登場し、さらにその後は高木のリンボクなどが繁殖していく。その結果地上の酸素濃度をどんどん高めていくことになります。そのことが海の動物のいくつかが、地上に上陸する大きなきっかけとなりました。そのあたりの地上の変化、様子については次回紹介します。

 

                    ダンクルオステウスの頭骨⬇︎

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〈出典〉ウィキペディア  フリー百科事典

               更新日時   2016年11月29日 01:02

https://commons.m.wikimedia.org/wiki/File:Dunkleosteus.jpg#mw-jump-to-license 

 

 

 

 

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 ※今から約5億年前のカンブリア紀から約3億6000万年前のデボン紀の間に栄えた代表的な海の中に生きた生物の紹介。生物が地上にあらわれる以前、生物は海の中でさまざまに進化が進み、多様で大量の生物が繁栄する。その進化とは殻、骨、歯の発達、脊椎動物、四肢動物の登場などだ。そうした進化こそが生物の地上への登場を可能にした。


⚪️海綿動物
カンブリア紀の海洋生物の中でも最も単純な動物のひとつで、今日でも約5000種類が確認されている。この生物は海の底の岩にくっついて暮らす。


⚪️サンゴ類
サンゴ礁は、小さな海洋生物(サンゴ虫)が祖先の死骸の上に住まいを築きながら何十万年もかけて作ったもの。現在世界最大のサンゴ礁はオーストラリア北東沖のグレート・バリア・リーフで南北2000キロ以上におよぶ。今日海洋生物のおよそ30%がこのサンゴ礁に生きている。そしてカンブリア紀の海もサンゴ礁が豊富にあり、グレート・バリア・リーフ同様多くの生命で満ちあふれていた。


⚪️クラゲ
クラゲはサンゴ虫と同じ刺胞動物門に属し、海綿同様原始的な生物だ。カンブリア紀にはどこにでもいた一般的な生物で、中にはライオンに匹敵する攻撃力を持つものもいた。クラゲは集団で狩りをする。クラゲは史上はじめて組織の分化が生じた生物のひとつだ。


⚪️アンモナイト
アンモナイトは約4億年前のデボン紀に登場した。巻貝に似ているが、最も近い仲間は頭足類のタコやイカである。堅い殻は、鋭い歯を持つ捕食者から身を守る防具の役目を果たした。ドイツで発見された大きなものは、直径が2m近くもある。6550万年前恐竜が絶滅したときに絶滅した。

 

⚪️ホヤ類
大きな袋のようなホヤは、海底に体を固定し、大量の海水を吸い込んで、食料を濾し取っている。ホヤの赤ちゃんはオタマジャクシのように水中を泳ぎまわる。推力をもたらすその特殊な尾には、脊索と呼ばれる原始的な背骨がある。ホヤの子孫は、この脊索を脊椎に進化させた。神経索や脊椎を持つあらゆる動物は、脊索動物門と呼ばれるグループに属し、魚、両性類、爬虫類、鳥類、哺乳類が含まれる。ホヤの赤ちゃんは、人類の最も古い祖先である。


⚪️板皮類
先史時代の海にいた恐ろしい生物の代表格でアゴと歯を持つ最初の魚。史上最強の噛む力を持つ種がいたことがわかっている。大きなものは体長10メートル、体重が4トン以上にもなり、まさに重戦車のようだった。ペルム紀後期(2億5200万年まえ)の大量絶滅で姿を消した。


⚪️ウミサソリ
毒針が仕込まれた尾を持つウミサソリは、体長2メートル以上になることもあり、先史時代の海に生息する最も危険な生物のひとつだった。節足動物門に属す。昆虫、クモ、甲殻類は皆この門に属し、三葉虫もこの門に含まれる。ウミサソリペルム紀末の大量絶滅で姿を消した。


⚪️カマス
カマスの先祖は、二つの優れた特徴を発達させて繁栄した。一つは浮袋を進化させ、水中で静止できる仕組みを持つ。もう一つは浮袋を使って聴覚を発達ささせたことだ。


⚪️肺魚
肺魚の祖先は、エラを原始的なな呼吸器官に改造して、海から陸へ逃れる道を築いた。2億年前の肺魚の化石も見つかっていて生きた化石と言われている。地上での空気呼吸とエラを進化させて地上を歩くこともできて海から陸へ上がる道を開いた。

 

🔶《第4回》私の『137億年の物語』

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   この章は「化石という手がかり」というテーマになっています。今から70年ほど前、オーストラリア人地質学者スプリッグが古い地層を調査中に奇妙な化石を発見します。それは世界最古の化石群で、今から6億3500万年前から9300万年に渡って続いた「エディアカラ紀」のものでした。ちなみにエディアカラ紀は発見したオーストラリアの地名エディアカラから命名されています。その化石が発見されたことで、太古の昔に実際に地球上で生きた生物のことが分かるようになりました。もちろん第2章でも紹介したように、30億年も前から地球上に生物はいました。しかし、それらはすべて化石として残らない微生物ばかりでした。

 

   それにしても微生物の誕生から骨や殻のある生物の誕生まで20数億年以上という恐ろしく長い時間がかかっています。しかし、この20数億年の間に生物は画期的な進化を遂げていくのです。最初に生まれた微生物は、天然に浮遊する無生物の有機物を捕食し、それを栄養源としていました。そしてあるとき栄養源としてもっと効率の良い方法を学びます。そう、同じ生物の微生物を捕食して栄養源とすることです。この辺の下りはすでにテーマ2で紹介しましたが、改めて復習してみましょう。

 

⚫︎単細胞生物から多細胞生物誕生
・活発な単細胞バクテリアは、自分より大きな単細胞バクテリアの体内に入り込み、「細胞内共生」という協力関係が生まれる。
※小さなほうは大きいほうの廃棄物を食べ、大きなほうは小さなほうの呼吸で生じたエネルギーを活用する関係。
・共生するようになった単細胞バクテリア(真核生物)の体内でさまざまな機能が発達する。「ミトコンドリア」と呼ばれる細胞内の器官は、食料をエネルギーに変える役割を果たすようになった。「葉緑体」と呼ばれる器官は、有毒廃棄物の処理を担うようになる。その中から自分と同じ細胞を作るのに必要なあらゆる情報を保管する遺伝子(「デオキシリボ核酸」=DNA)が生まれる。
・簡単に豊富なエネルギーを得るために活動的なバクテリアは、生きているバクテリアを丸ごと飲み込むようになる。ここから捕食者と被捕食者の関係が生まれ、発展し、急速に進化していく。
・そうした進化の過程の中で、単細胞生物が結合して、地球初の多細胞生物が誕生した。そのいくつかが今日の動物となり、別のいくつかは植物になった。

 

   そうなんです。単細胞微生物の遺伝子DNAは、元は単細胞微生物に入り込んだシアノバクテリアなど小型の微生物です。大きな細胞の中に入り込んでその細胞の栄養源を餌とするつもりが、いつしかその細胞と一体化して司令塔となるわけです。細胞内のミトコンドリア葉緑体も元は別の単細胞微生物だったものです。それが別の細胞の中でその細胞と一体化し、より完璧に細胞を機能させていく。1単細胞微生物といってもそのDNAの仕組みは超高性能で、存在そのものが神秘であり、驚異であり、人知を超越しているように思えます。この20数億年の時間の経過の中で、エディアカラ紀以降の目に見える生命(化石として残っている)の飛躍的進化を推進するための準備、細胞の高性能化の蓄積期間のようでもあります。

 

   もう一つ、生物の進化にとって極めて重大な出来事がありました。それは〝有性生殖〟です。これも偶然他のバクテリアに食べらた同じバクテリアが、捕食者の核の中に入り込んだことがきっかけです。そしてDNAの2本の二重らせん構造が生まれます。生物はこの有性生殖によって急速に複雑化し、多細胞生物へと進化していきます。もしバクテリアが他のバクテリアの核に入り込んで、DNAの二重らせん構造をつくるという偶然がなければ、地球上の生物はいまだに細胞分裂によってのみ増えた微生物のみの世界がいまだに続いていたことでしょう。動物どころか植物も存在しないのです。肉眼で目にできる生物は全くいない世界です。そうした微生物の進化のプロセスを考えてみると、改めて長い長い太古の昔の出来事に畏敬の念を抱いてしまいます。

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(出典)

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:DickinsoniaCostata.jpg#mw-jump-to-license

  

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 ⚫︎およそ10億年前まで地球に存在する生命体はわずか2種類だった。ひとつは最初に登場した単細胞のバクテリアで、メタンと酸素を老廃物として放出した。もうひとつは、比較的新しい時代に単細胞生物が融合して生まれた多細胞生物(真核生物)で、大気中に増えつつあった酸素をエネルギー源にした。生命が誕生してからおよそ20億年経ってまだ2種類の生命体という状態にあった。
⚫︎10億年前以降から多細胞生物は、重大な変化が起きる。「有性生殖」である。親のクローンとして複製を繰り返してきた単細胞生物と違い、「有性生殖」では子は常に独自の遺伝子コードを持って生まれる。その結果生物の多様化に拍車がかかった。
⚫︎目に見えないバクテリアだった生物は多細胞生物に進化し、6億3500万年前には化石の痕跡として残るような大小さまざまな生物が生まれていた。。こうした生物が主流となる時代が9300万年わたって続いた。この時代を発見された地名にちなんで「エディアカラ(オーストラリア)紀」という。
⚫︎カンブリア爆発
エディアカラ紀の後、5億4200万年前から4億8800万年前までの5400万年を「カンブリア紀」といい、生物が骨、殻、歯のあるものに進化したことで化石として残るようになり、飛躍的に生物数を増やすことになった。

 

   年内の投稿はこれが最後になります。1月は仕事で忙しくなるのでブログ投稿は休みます。2月から再スタートします。

  

🔶《第3回》私の『137億年の物語』

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   この章のテーマもこの前のテーマ1と2に劣らず驚愕の内容になります。その驚愕の内容とは〝プレート・テクニクス〟です。私の中の世の中の不思議・驚愕ベスト3の3つ目がこの章で紹介されているプレート・テクニクスとテーマ7で紹介されているプレート・テクニクスがもたらした地球の大激変(生物の大量絶滅を含む)といってかまいません。ビックバンと生命の誕生、そしてこのプレート・テクニクスと地球の大激変が137億年の物語の中でもやはりそのスケールという点で他を圧倒しているのです。「ではもうその後の章、テーマはたいしたことはないのか」って?  いやいやそんなことはありません。この本の最後まで未知との出会い、驚きの連続でワクワク、ハラハラさせてくれます。

 

   さて話しを戻します。地球の表面を覆う地殻が動いているという現象、高校の地学の時間に聞いたことがあると思います。また、地球は2億5000万年ほど前には〝パンゲア〟という一つの巨大な大陸だったということも聞いたことがあるでしょう。その大陸など地球の表面を覆う地殻が動いてるという事実を聞いて驚かされた記憶があるかもしれません。私も同様です。そしてこの本を読んで新ためて驚かされたのは、パンゲアのような超大陸はそれ以前にもあって、ちゃんと名前とその時期まで推定されているということです。ということは地球は誕生して地殻という構造ができて以降その地殻はずっと動き続けてきたということです。正確には地殻と更にその下のマントルの上層部(地表から約150Kmまでのマントル。それ以深のマントル流動性を持つようになる。)を含めた部分をプレートといい、マントルが動くことによってその上に乗っているプレートが動いているということです。

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   それでは新ためてこの地球内部の構造について学習してみましょう。地球内部の大まかな構造は、内部から内核、外殻、マントル、地殻の四構造になっています。私たちの立っている大地を含むプレートが動くということは、その下のマントルが更にその下の外殻の高熱によって対流(マントル対流)しているために起る現象です。マントルは地殻とは成分は違いますが、地殻と同じ岩石で個体です。「えっ!個体の岩石が動くのか?」って思うでしょう。そうなんです。プレート面より下のマントル流動性をもっているのです。例えば氷河が個体なのに重力の影響で毎年数センチずつ動くのと同じです。地球内部の外殻(鉄合金で液状)の高温の影響でマントル内が対流しマントル表層が動く。それによってそこに接するプレートが毎年数センチずつ動くのです。ところで地殻は場所によって厚さが異なります。そう、海洋の場合は厚さが6〜7Km、大陸の場合は最大で60〜70Kmと10倍の差があります。数億年単位では、プレートの動きによってこの大陸同士がぶつかり合います。そしてより多くのプレートがマントル内に沈み込む。そうすると地球内部のマントルに甚大な圧力がかかります。これによってマントル内の対流(プルーム)も大きく影響され、マントル内に上向きのスーパープルームが発生すると考えられます。今も残る巨大な溶岩の塊であるシベリア・トラップ。これは今から約2億5000万年ほど前の巨大噴火によって地上に噴出したものとされています。火口の大きさは長いところで直径約1000Km。丁度東京から北海道北部までが火口の長さになります。過去の富士山の噴火や浅間山の大噴火など比較のしようのない規模です。そのシベリアン・トラップのもととなった火山はなんと100万年続いたと言われています。その他にこの時期に巨大隕石あったという説もあります。いずれにしてもその後「ペルム紀の大量絶滅」といわれる大激変が起こります。全生物の96%が死滅するのです。この辺の下りはテーマ7の〝ペルム紀末の大量絶滅〟で改めて紹介しましょう。

   それから地球の内部構造といってもそのほとんどは地震波の観測結果の分析に基づく仮説です。人類はまだ掘削技術でマントルまで到達していません。いずれ人類はマントルまで掘削して新たな事実が発見されていくでしょう。

  

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 ⚫︎最初に登場したメカニズムは「水循環システム」だ。雲になって雨を降らせるという自然の淡水供給システムである。これには今から37億年前から20億年前にかけ地球と生命体の協力関係が自然のシステムとして出来上がっていく。雨は雲が降らせる。その雲は水蒸気が集まった「雲粒」の集合体。そして水蒸気が雲粒になるのに原始バクテリアが吐き出したガスの粒子が要因となっている。この雲による雨によって水を巡回させ、地球を適温に保たれている。
⚫︎海の塩は、地上に降り注いだ雨が岩石に含まれるミネラルを溶かし、それが川から海へ流れ込んだものである。地球と自然は海中の塩分濃度を保つための協力関係を発達させた。海水を潟に閉じ込め、海水が太陽の熱で蒸発すると塩が地表に堆積するこのプロセスによって、塩分が海水から取り除かれている。
⚫︎プレートは、数十億年にわたって、マントルと呼ばれる液状の岩石(流動性のある固体)の上に浮かんで移動しつづけている(プレート・テクトニクス)。プレートを動かしているのは、地球の核のとてつもない熱である。そのプレートの移動が、大陸の分離と大陸のぶつかり合いを繰り返してきた。これまで少なくとも3回超大陸が生まれている。こうしたプレートの移動は、火山の噴火を引き起こして温室効果ガスを発生させ、地球が暖められ、地球の生命は新たな段階に進む。地殻変動のサイクルは地球の表面をかきまわし、気候を変動させ、不要な塩分とミネラルを地中に封じ込め、超大陸を作っては壊した。これが地球の生命維持プロセスで、大気の組成から地球の温度、海水の塩分濃度まであらゆることをコントロールして生命の進化を支えてきた。
◆最初の超大陸(15億年前)・コロンビア

   2回目 〃 (8.5〜6.3億年前)・パロディニア

   3回目 〃 (2.5億年前)・パンゲア

   ※ただし、この章で紹介されているのは上の二つの超大陸コロンビアとパロディニアのみ。

 

    次回は、テーマ4「化石という手がかり」です。年内に投稿できない場合は、仕事の関係で1月が繁忙期になるためブログ投稿作業をしばらく休みます。

 

   

🔶《第2回》私の『137億年の物語』

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   今回第2回目の テーマも第1回目のテーマに劣らずこの世にある最大級の不思議の一つです。この本を読んでいくと『えっ、そんなことがあったのか!』とか『なるほど、そういうことだったのか!』という驚きがたくさんあります。この本はそんな驚きの連続、未知との出会いの連続です。そんな中でも前回と今回のテーマは私にとって最大の不思議(驚きを含む)ベスト3の一つといえます。人類の誕生より何よりその人類誕生の一番最初の大本(おおもと)となる単細胞生物、すなわち先ず最初に生命誕生という正に神がかりな奇跡が起こったこということです。今から30億年ほど前の地球上の海中で、突然無生物が司令を出して他の無生物を自分の中に取り込むことを始めた。そう、この世の最大の不可解はそこです。何故無生物が突然無生物を取り込み、それを栄養として活用を始めたのか、生命体すなわち単細胞生物に進化したのかです。そこがどう考えても理解不能です。

 

   本書で紹介しているように1953年、シカゴ大学のハロルド・ユーリー教授の教え子スタンリー・ミラー(後に教授)は、大学の実験室で初期の地球に存在したと思われる物質、水素、メタン、アンモニアなどの気体と沸騰した蒸気を注入、そこに強力な電流を流して火花を散らす。原始地球の大気を再現する実験から生命のもととなる有機物アミノ酸を造ることに成功するのです。しかし残念ながらそこまでです。その後人類は現在に至るまで誰一人そこから生命誕生を成功させた人はいません。科学的にさまざまな仮説がありますが、実験でアミノ酸から生命誕生のプロセスを検証した人はいないのです。そのため今も科学を専門にする人の中でも「生命誕生は人間の理解を超越している。神の力があったのだ」という人がいます。神を持ち出す気持ちも分からない訳てはありませんが、それではこの生命誕生の問題は思考停止ということになってしまいます。また、「生命は宇宙から来た」という説をとる科学者もいます。確かに宇宙の彗星の中にアミノ酸などの有機物が存在していて、それが軌道を外れ地球に衝突して生命の材料となる有機物が地上にばら撒かれたという可能性はあるでしょう。いや、可能性でなく隕石や彗星などの衝突でアミノ酸などの有機物がもたらされた、あるいは衝突の際に有機物が出来上がったという説が有力になっています。しかし、「生命そのものが宇宙から来た」という説になると話しはまた振り出しに戻ってしまいます。そう、今度は地球にやって来た生物はその生物が存在した星で、いったいどういうプロセスで生命を誕生させたのかという疑問に変わるだけです。ビックバンによる宇宙誕生は爆発後最初に粒子が、そして原子に、さらに分子、高分子へと変化していったプロセスは宇宙のどの場所でも共通なはずです。ビックバンと同時に生命が誕生することなどあり得ないからです。

   ただこの本で紹介されているスタンリー・ミラー氏の実験や初期の単細胞バクテリアなどについての説明を読む中で、自分なりに地球の太古の時代に生命が誕生したころの様子をそれとなく空想してみることはできるでしよう。

 

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   今から30億年以上前の地球上で海ができてから数億年の経過の中で、隕石や彗星の衝突、そして紫外線や落雷などさまざまな自然現象を受けながら海中の物質は単純な分子から低分子有機物に、そしてさまざまな高分子有機物が生まれる。そうした経過の中でそれらは互いにくっついたりしながらアメーバのような形状になって海を漂い、太古の海の入江などに大量の高分子有機物が集まる。そして生体内で行なわれる代謝に近い形にのものが自然界で化学反応として始まり、それが更に進化していきやがてエネルギーを生む。そのエネルギーは高分子有機物の集合体を取り込み、膜をつくる。その結果が単細胞生物の誕生になるつながっていく……。

    このあたりが私の妄想の限界です。ただこれからもこのテーマに関心を持って妄想のレベルを高めたいと思います。

 

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 ⚫︎今日まで、アミノ酸を人工的に創り出すことはできたが、化学物質から生きている細胞を創り出せた人はいない。生命誕生も宇宙誕生同様仮説である。
⚫︎生きている細胞の不思議なところは、繁殖できることだ。ウィルスやバクテリアをはじめ、単細胞生物は通常、自分の完全な 複製をつくる(ときおりシステムにエラーが発生して、変異が生じることもある)。増殖能力があるからこそ生命体はこの宇宙に存在するものの中で特別な存在。
⚫︎海の底で生まれた生物
・2種類の生物が海から生まれる。

➀メタン生成細菌
・深い海底で進化したため、太陽風の致命的影響を逃れることができた。ブラックスモーカーと呼ばれる、海底で刺激性の熱水を噴き出している煙突のような噴出口の近くで繁殖し、食料となる化学物質と温かさを得ている。
➁シアノバクテリア藍藻
・食料不足の折に起きた突然変異から進化したものと思われる。まったく新しいエネルギー源「光合成」だ。日光を使って二酸化炭素と水とを分解し、酸素とエネルギーに変換するようになる。

⚫︎シアノバクテリアによる光合成によって地球の大気は変わっていった。数十億年にわたって光合成をするうちに空気中に大気が蓄積されていった。このことにより生物の進化は、次の段階にすすんでいった。
⚫︎およそ20億年前、もうひとつの突然変異が起きた。単細胞バクテリアは呼吸するようになり、酸素豊かな大気の中で暮らせるようになった。酸素はATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーをたっぷり含む物質をつくり出せる。そのため酸素呼吸するようになった生物は、他の方法で得るより最大10倍ものエネルギーを得られるようになった。
⚫︎単細胞生物から多細胞生物誕生
・活発な単細胞バクテリアは、自分より大きな単細胞バクテリアの体内に入り込み、「細胞内共生」という協力関係が生まれる。

※小さなほうは大きいほうの廃棄物を食べ、大きなほうは小さなほうの呼吸で生じたエネルギーを活用する関係。
・共生するようになった単細胞バクテリア(真核生物)の体内でさまざまな機能が発達する。「ミトコンドリア」と呼ばれる細胞内の器官は、食料をエネルギーに変える役割を果たすようになった。「葉緑体」と呼ばれる器官は、有毒廃棄物の処理を担うようになった。その中から自分と同じ細胞を作るのに必要なあらゆる情報を保管する遺伝子(「デオキシリボ核酸」=DNA)が生まれる。
・簡単に豊富なエネルギーを得るために活動的なバクテリアは、生きているバクテリアを丸ごと飲み込むようになる。ここから捕食者と被捕食者の関係が生まれ、発展し、急速に進化していく。

・そうした進化の過程の中で、単細胞生物が結合して、地球初の多細胞生物が誕生した。そのいくつかが今日の動物となり、別のいくつかは植物になった。

 

 次回テーマ3は「地球と生命体のチームワーク」です。