🔶《第4回》私の『137億年の物語』

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   この章は「化石という手がかり」というテーマになっています。今から70年ほど前、オーストラリア人地質学者スプリッグが古い地層を調査中に奇妙な化石を発見します。それは世界最古の化石群で、今から6億3500万年前から9300万年に渡って続いた「エディアカラ紀」のものでした。ちなみにエディアカラ紀は発見したオーストラリアの地名エディアカラから命名されています。その化石が発見されたことで、太古の昔に実際に地球上で生きた生物のことが分かるようになりました。もちろん第2章でも紹介したように、30億年も前から地球上に生物はいました。しかし、それらはすべて化石として残らない微生物ばかりでした。

 

   それにしても微生物の誕生から骨や殻のある生物の誕生まで20数億年以上という恐ろしく長い時間がかかっています。しかし、この20数億年の間に生物は画期的な進化を遂げていくのです。最初に生まれた微生物は、天然に浮遊する無生物の有機物を捕食し、それを栄養源としていました。そしてあるとき栄養源としてもっと効率の良い方法を学びます。そう、同じ生物の微生物を捕食して栄養源とすることです。この辺の下りはすでにテーマ2で紹介しましたが、改めて復習してみましょう。

 

⚫︎単細胞生物から多細胞生物誕生
・活発な単細胞バクテリアは、自分より大きな単細胞バクテリアの体内に入り込み、「細胞内共生」という協力関係が生まれる。
※小さなほうは大きいほうの廃棄物を食べ、大きなほうは小さなほうの呼吸で生じたエネルギーを活用する関係。
・共生するようになった単細胞バクテリア(真核生物)の体内でさまざまな機能が発達する。「ミトコンドリア」と呼ばれる細胞内の器官は、食料をエネルギーに変える役割を果たすようになった。「葉緑体」と呼ばれる器官は、有毒廃棄物の処理を担うようになる。その中から自分と同じ細胞を作るのに必要なあらゆる情報を保管する遺伝子(「デオキシリボ核酸」=DNA)が生まれる。
・簡単に豊富なエネルギーを得るために活動的なバクテリアは、生きているバクテリアを丸ごと飲み込むようになる。ここから捕食者と被捕食者の関係が生まれ、発展し、急速に進化していく。
・そうした進化の過程の中で、単細胞生物が結合して、地球初の多細胞生物が誕生した。そのいくつかが今日の動物となり、別のいくつかは植物になった。

 

   そうなんです。単細胞微生物の遺伝子DNAは、元は単細胞微生物に入り込んだシアノバクテリアなど小型の微生物です。大きな細胞の中に入り込んでその細胞の栄養源を餌とするつもりが、いつしかその細胞と一体化して司令塔となるわけです。細胞内のミトコンドリア葉緑体も元は別の単細胞微生物だったものです。それが別の細胞の中でその細胞と一体化し、より完璧に細胞を機能させていく。1単細胞微生物といってもそのDNAの仕組みは超高性能で、存在そのものが神秘であり、驚異であり、人知を超越しているように思えます。この20数億年の時間の経過の中で、エディアカラ紀以降の目に見える生命(化石として残っている)の飛躍的進化を推進するための準備、細胞の高性能化の蓄積期間のようでもあります。

 

   もう一つ、生物の進化にとって極めて重大な出来事がありました。それは〝有性生殖〟です。これも偶然他のバクテリアに食べらた同じバクテリアが、捕食者の核の中に入り込んだことがきっかけです。そしてDNAの2本の二重らせん構造が生まれます。生物はこの有性生殖によって急速に複雑化し、多細胞生物へと進化していきます。もしバクテリアが他のバクテリアの核に入り込んで、DNAの二重らせん構造をつくるという偶然がなければ、地球上の生物はいまだに細胞分裂によってのみ増えた微生物のみの世界がいまだに続いていたことでしょう。動物どころか植物も存在しないのです。肉眼で目にできる生物は全くいない世界です。そうした微生物の進化のプロセスを考えてみると、改めて長い長い太古の昔の出来事に畏敬の念を抱いてしまいます。

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(出典)

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:DickinsoniaCostata.jpg#mw-jump-to-license

  

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 ⚫︎およそ10億年前まで地球に存在する生命体はわずか2種類だった。ひとつは最初に登場した単細胞のバクテリアで、メタンと酸素を老廃物として放出した。もうひとつは、比較的新しい時代に単細胞生物が融合して生まれた多細胞生物(真核生物)で、大気中に増えつつあった酸素をエネルギー源にした。生命が誕生してからおよそ20億年経ってまだ2種類の生命体という状態にあった。
⚫︎10億年前以降から多細胞生物は、重大な変化が起きる。「有性生殖」である。親のクローンとして複製を繰り返してきた単細胞生物と違い、「有性生殖」では子は常に独自の遺伝子コードを持って生まれる。その結果生物の多様化に拍車がかかった。
⚫︎目に見えないバクテリアだった生物は多細胞生物に進化し、6億3500万年前には化石の痕跡として残るような大小さまざまな生物が生まれていた。。こうした生物が主流となる時代が9300万年わたって続いた。この時代を発見された地名にちなんで「エディアカラ(オーストラリア)紀」という。
⚫︎カンブリア爆発
エディアカラ紀の後、5億4200万年前から4億8800万年前までの5400万年を「カンブリア紀」といい、生物が骨、殻、歯のあるものに進化したことで化石として残るようになり、飛躍的に生物数を増やすことになった。

 

   年内の投稿はこれが最後になります。1月は仕事で忙しくなるのでブログ投稿は休みます。2月から再スタートします。